2014/6 改訂 現金輸送車 (貴重品輸送車等含) の基礎知識

お金の流通について
日銀で印刷・鋳造されたお金は、銀行などの金融機関を経由して家庭や企業などに流通します。人体の血液の流れに例えると、日銀から銀行そして家庭や企業に渡るまでが動脈で、家庭や企業から集まったお金が銀行を経由して再び日銀に戻っていく流れが静脈となります。

このように、日銀は新しい紙幣や硬貨などのお金を供給し、同時に古くなったお金を回収し循環させていますが、なかでも 千円や五千円、一万円などの「紙幣」は、文字どおり紙で作られたお金ですので、古くなるとボロボロになります。そのためおおよそ1~2年くらいのサイクルで、市中銀行などから日銀に回収され、最終的には溶解され新札の原料としてリサイクルされています。

お金は、以上のように動脈から静脈を通じて常に循環していますので、頻繁に所有者が変わるという特徴があります。 そのため様々な会社や組織が現金輸送に携わりますので、使用する車両や運用形態も様々です。



お金(貨幣)の流通フロー図
①日銀本店(造幣局)→ ②各地の日銀支店 → ③金融機関の事務センター → ④銀行本店・支店/ATM → ⑤家庭や企業 → 経済活動(⑥集金サービス) → ⑦集金サービス会社事務センター → ④銀行本店・支店/ATM → ③銀行の事務センター → ②各地の日銀支店 → ①日銀本店



現金輸送の担当
① → ② ・・・・・・・・・・・・・・ 日銀所有の輸送車・鉄道
② → ③ → ④・・・・・・・・・ 銀行が委託した民間の警備輸送会社など
⑥ → ⑦ → ④ ・・・・・・・・ デパートやスーパーが委託した民間の警備輸送会社
④ → ③ → ② ・・・・・・・・ 銀行が委託した民間の警備輸送会社など
② → ① ・・・・・・・・・・・・・・ 日銀所有の輸送車・鉄道



日銀の現金輸送
日銀本店から支店へ新札を、帰りは古札を輸送します。(10トン車級の防弾トラックです)

※ 往路は各都道府県警察のパトカーがリレー方式で警備に就きますが復路は付いていないことが多いようです。
往路で運ぶのは紙幣番号が記録されたピン札で、マネーロンダリングしなければ使えません。反対に復路で運 ばれる古い紙幣は、雑多に集まってきた古札ばかりで、番号が記録されていません。
ハリウッド映画のシーンで、「身代金は使い古しの小額紙幣にしろ」、などのセリフが出て きます。強盗を本職とするギャングなどは、マネーロンダリング不要の古札を好みます。毎回復路で古札を積んでいるかは分りませんが、パトカーは、往路だけでなく復路も警備に就いた方が良いかもしれません。

<最新情報:20014/6/11>
復路は警備が付いていないことが多いようですと書きましたが、本日午後、東北道上り線で復路の日銀輸送車を埼玉県警と警視庁のパトカーがリレー方式で警備しているのが確認されました。

米国では、還流する古札を狙う大規模な強盗事件が多発したそうです。現在都市間は航空機を使って輸送しているそうですが、飛行機への積み下ろしの場所は、駐機場や貨物ターミナルではなく、誰も近寄れないだだっ広い誘導路の端で、「Taxiwayへの乗入許可」を持つ特別な警備輸送会社が装甲トラックを乗り入れて、武装した警備員が受け渡しをしています。そのくらいの用心をしなければならないほど、古札の流通は危険なのです。

東北道上り線 浦和料金所 埼玉県警パトカーが警備を担当。

首都高速川口線「川口PA」にて、埼玉県警(手前)から警視庁パトカー(奥)へバトンタッチ。

都内の首都高速道は、警視庁のパトカーが警備を担当。埼玉県警のパトカーは所定警備終了しドロップしていきました。




銀行などの金融機関の現金輸送
1)日銀便
銀行などの金融機関は、窓口での払い出しやATMの引き出しに備えて、現金を用意しなければなりません。 そこで毎営業日、日銀の本支店に行き現金の受領(と古札の返却)を行わなければなりません。この時使われる車両はほとんどが民間警備輸送会社の現送車です。なお、この現送車は一般の現送車とは異なるセキュリテイがさらに強化された仕様となっており、通称「日銀便」などと呼ばれています。
警備輸送会社は、日銀本・支店から直接現金を受領する権限は与えられていませんので、銀行の職員が同行します。




2)ルート便
各銀行には、事務センターと呼ばれるデリバリーの拠点が有り、日銀からのお金の受入と保管、さらに各支店への紙幣・つり銭の供給など、ルート配送の仕立てを行います。 現金輸送車は、ここで仕立てられた現金などを積載し、ルート別の集配に出発します。
各支店には、概ね午前と午後に一回ずつ立ち寄り、新札や硬貨の補充、古札、手形・小切手等の回収等を行います。 通常は同じ銀行の支店だけのルート配送ですが、最近は複数行の支店を、一社の警備輸送会社が配送する「混載便」も地域によっては見うけられます。
また、地方では銀行の店舗数が少なくデリバリーの経済効率が悪いため、大手警備輸送会社は地元の警備会社を傘下に組み入れ再委託するケースも増えています。 なお、その場合1台から貨物輸送の許可が取得できる「軽貨物輸送」が主体となっています。


※ルート集配で使用される1トン級現金輸送車例

軽四現金輸送車





その他の銀行の現金輸送
1)ATMへの現金補充車
銀行店舗内に設置されたATMの現金補充は、銀行の職員が行いますが、駅やコンビニ、その他の銀行以外の場所に設置されたATMは、警備輸送会社に委託されています。こちらは定期的な銀行店舗間の輸送とは異なり、不定期輸送が中心となります。
※米国のATM補充作業を視察しました。米国では、現金輸送車の後部に作られた小さな事務スペースに、札勘機や電卓、無線LANに接続したノートパソコンなどが設置されており、ATMのカセットボックスを回収して精査した後、その残金を次のATMの補充金に加えて、最後は残金ゼロで銀行に帰るといったやり方をしていました。

2)銀行母店営業車
各銀行には、地域の拠点となる大型の店舗を母店、小さ目の複数の店舗を子店としています。 母店にはやや多めの現金がストックされていますが、子店には限られた額しか残してありません。
そのため子店では時々現金が不足することがあります。ルート便による補充が間に合わないときには、やむを得ず母店の現金を行員さんが直接子店に運ぶ場合もあります。使用する車両は、現金輸送専用車ではなく、セキュリティ等は装備されていない普通の営業車が使用されているようです。


3)メールカー
金融機関の本支店・事務センター間や小売店などのチェーン店等で運行されています。小口現金、手形、小切手、商品券、クレジット帳票、社内郵便物等の貨物が中心です。メールカーには、本格的な金庫室は搭載しておらず、簡単な仕切り区画と窓に鉄格子か鉄板が張ってある程度で、セキュリティシステムも装備していない車体もあります。
メールカーと現金輸送車は外観上全く区別がつかないため、現金輸送車と誤認されて襲撃を受けた例もあります。メールカーで多額の現金を運ぶなど、本来専用の現金輸送車を使用すべきところにメールカーを流用しているケースが多くあるようです。



銀行以外の現金・貴重品輸送車
1)売上金回収サービス会社

デパートやスーパー、ギャンブル場、駅の定期券売り場などには多額の現金が毎日集まってきます。このお金は一旦事業所内の金庫に収納されますが、週に何回かは銀行などの金融機関に持ち込まなければなりません。また、銀行の夜間金庫サービスが廃止された関係で、中小規模の店舗でも売上金の回収・口座入金などの、売上金の管理が大変な作業となってきました。そこで売上金を回収し精査のうえ、指定口座に振り込んでくれる。さらに売上金回収時に店舗で必要なつり銭の硬貨も補充(両替機)してくれる、といったサービスを提供する、売上金回収業者が急成長してきました。
大手業者は、大都市圏に複数の事務センターを持ち、中小の金融機関並みもしくはそれ以上の紙幣や硬貨のストックを持つと言われています。この分野で使用する現金輸送車は、重量物の硬貨の扱いが多いため、2トン積載のバン型トラックが多用されています。
※硬貨の取扱いが多い場合パワーゲート付なども使用されます。



2)硬貨輸送車
金融機関の本支店・事務センター間やスーパー、パチンコ店、自動販売機ベンダーへの集配に使われています。従来メールカーや現金輸送車で運搬していましたが、肉体的負担を軽減するため油圧ゲートや専用台車を装備した硬貨専用輸送車が普及し始めています。 硬貨は金額が低く、重量があるため、強盗に遭ったことはほとんどありません。セキュリティシステムは簡易なものが中心です。 ベース車には1~2t級のルートバン、2t以上はトラックを使用します。
※右画像は、1トン級のパワーゲート車

貴重品などの輸送
現金以外にも、美術品などの価値のある物や、強奪されると大きな被害が発生する商品券、株券、クレジットカード、ロム、カルテなどの個人情報、磁気テープデータ、感染性の特別管理産業廃棄物、核燃料、核関連物資などが有ります。
なかでも美術品と重要書類の廃棄輸送分野ではエンドユーザーの意識や要求が高いため、それなりの対策が講じられているようですが、それ以外の分野では残念ながら、リスクに応じたレベルのセキュリテイ対策が取られているとは言い難い状況です。

※美術品輸送専用車例

3)パチンコ店の景品・買取金輸送
銀行などの大規模な現金輸送と異なり、目立たないよう普通のワゴン車などが使用されているほか、装備や人員、訓練などが不十分な割に、多額の現金を運んでいるためこれまでに何回も強盗の被害がでております。




※防犯上の事情により細部の説明は割愛させていただきます


普通現金輸送車(非装甲・防刃・防鈍器型)の標準仕様
最近の現金輸送車襲撃事件で使われた凶器のうち、約半数はナイフ等の刃物と金属バットやかなづち等の鈍器です。 これらの凶器には装甲車でなくても比較的有効な対応が可能です。
非装甲現金輸送車は通常のバン型車に金庫室やセキュリティシステムを搭載し、更に乗務員席の窓ガラスを特殊 なフルムで補強することにより、刃物や鈍器による攻撃から乗務員を守ります。

“大事な荷物を積載する貨物室は「二重構造ダブルロックシステム」が基本です”
1
貨物室の窓は鋼板で閉鎖(覆面タイプはガラスの内側に施工)し、耐破壊強度を補強する。

2
独立した金庫室を有している・・・・・「二重構造」

3
車体及び金庫室は破壊に対し一定以上の時間に耐える能力を持つこと
4
交通事故等で簡単に開扉せず、且つ開放不能に陥らない構造の扉を有する
5
金庫室には特殊な錠や鍵、解錠装置を使用しなければ扉を開けられない施錠装置を有する「ダブルロック」

※本来の車体のドアや錠前は、強度・セキュリティレベルが低く、オートロックではないため金庫室の鍵と錠を強化し、オートロック化して補完します
6
すべての金庫室ドアは自動閉鎖する機構を有する
7
金庫室に閉じ込めれた場合、速やかに脱出できる機構を有すること
8
防犯用の警報装置を有しその警報は十分な音量を有する
9
無人時の貨物、車両の盗難を防止するための警戒装置を設置している
10
乗り逃げを防止する装置を有する
11
刃物や鈍器(銃器対策はOP)による攻撃や威嚇から乗務員を守る構造を有する

※補強された窓ガラスは砕け散ることなく、シッカリとしたバリア効果を発揮します

 

用途に応じて3タイプ4車種を製造しています

S-type Standard
 
スタンダードタイプ
乗車定員3名、パネルバンベース
最も容量の大きい金庫室を持つ標準型現金輸送車。金庫室は、鋼製二重構造(特殊錠付)で、左側面片開き扉及び後部観音扉の二ケ所の搬出入口を有している。主に警備会社、輸送会社樣向け。 硬貨輸送仕様も可
※金庫室は後方観音扉、サイドは片開き扉



C-type Concealed
 


コンシールド(覆面)タイプ
貨物室の窓ガラスを内側から鋼板で閉鎖し、金庫室を取付。金庫室は鋼製二重構造(特殊錠付)で、S及びDタイプと同様のタイプ又は後方観音扉のみのタイプを選択可能。外観上は、普通のバンとほとんど判別できません。金融機関向け及び集金車等に最適
C-1:金庫室は後方観音扉、サイドは片開き扉
C-2:金庫室は後方観音扉、前方はスライド扉


D-type Street delivery
 
路上デリバリー対応タイプ
乗車定員4名、ハーフパネルバンベース
路上等でデリバリーを安全に行うために開発されたシステム。
車体を運転室・予備室・金庫室に分けたスリーコンパートメント方式。 搬出入時は予備室の扉を施錠した後、金庫室を開ける。金庫室を施錠した後、予備室の扉を開けることにより、犯罪者に襲撃の機会を与えず防犯効果を高めている。後部扉は、安全な施設内に限定して使用する。
※金庫室は後方観音扉、前方はスライド扉
助手席用親子ミラー




防弾仕様の現金輸送車(拳銃・散弾銃耐弾レベル)(自動小銃耐弾級は別途)
乗務員席のみ防護した簡易装甲車(主にワゴン車タイプ)と、トラックシャーシーに装甲ボディを架装したフル装甲車の二種類があります。
海外には装甲車の防弾能力を示す規格がありますが、日本には規格や基準がありませんので、米国のNIJ規格を準用しています。 日本の国内犯罪に使われる銃器は、ピストルか狩猟用の散弾銃がほとんどで、これらの銃弾を防ぐには「NIJ III-A」(ハンドガン)以上の防弾レベルが必要となります。 なかでも、日本の犯罪には「トカレフ拳銃」が登場しますが、この拳銃は貫通力が非常に強く「NIJ III-A」レベルの製品でも貫通する場合があります。アメリカ製のLAV(ライト アーマー ビークル)と呼ばれるジャンルの装甲車(乗用車タイプを含む)はトカレフ弾が貫通しますので注意が必要です。
また、積みおろし時や徒歩搬送中は無防備な状態となりますので、防刃ベストや防弾ベスト、防弾ヘルメット等のパーソナルプロテクション装備が必要なことは言うまでもありません。

当社防弾輸送車の特徴
防弾現金輸送車は、米国規格NIJ-IIIA、ユーロ規格EN-B4ハンドガン耐弾レベルを自社工場で製造しております
車検もしくは、予備検をお付けして登録できる形で納車いたします

1)装甲車(外装加工)タイプ


2)簡易防弾(目立ない内側加工)タイプ



3)防弾素材(防弾ガラスや特殊鋼、ケブラーパネルなどの特殊素材)
防弾ガラス
ケプラーパネル
パンクしても走れるランガード(op)


4)防弾レベル

銀行や現金輸送車の襲撃に使われた武器のうち、最も威力・脅威の高い狩猟用散弾銃とトカレフ拳銃に対応しています。また、オプションで、スラッグ弾や、狩猟用ライフル弾、軍用自動小銃弾対応も製作いたしております。






海外(北米・西欧の先進国)では、非装甲(ソフトスキン)現送車に乗務してくれる社員はいないということと、ソフトスキン車に乗務させ、強盗犯などに銃撃され亡くなった場合には、警備輸送会社はもとより、現金輸送を委託していた銀行も遺族から莫大な賠償金を求めて訴訟を起こされるそうです。そのためほぼ100パーセント装甲仕様の現金輸送車が使用されています。

フランスでは、度重なる現金輸送車襲撃事件の抑制を図るために、現金輸送車の防護基準が法律で定められました。 最低限AK-47カラシニコフ小銃の射撃に耐える防弾性能が義務付けられ、2006年から実施されています。

また、アメリカでは数年前にハイスクールでライフル銃を乱射する無差別射殺事件が起こりましたが、その時校内の逃げ遅れた生徒たちを救出するために、地元警察が近くの警備会社から現金輸送車(装甲車)を借りてきて救出に使用しましたが、そのくらい普通に身近な存在です。

また、ハワイやグアムに旅行した際にホテルを観察していると、午前10時過ぎくらいに警備輸送会社の装甲輸送車が各ホテルを巡回して、昨日の売上金を回収していく様子が見られます。 また大規模なショッピングセンターやDFS(免税店)でも、売上金の回収のほか、ロレックスなどの高額商品の納品に、防弾装甲車が使われているのを見ることができます。

中国、韓国、フィリピン、マレーシア、シンガポールなどアジアの国でも装甲現金輸送車を頻繁に見かけます。 そのくらい諸外国では、装甲輸送車が普及しておりますが、日本では比較的治安がよかった関係で、現在でも現金輸送車は非装甲車(ソフトスキン)が主流です。  装甲車(ハードスキン)は、日銀と一部の警備輸送会社等で運行されていますが、微々たる台数というのが実状です。







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  参考資料:世界の現金輸送車
マレーシア